Tips by Paul

今回のTips by Paulでは以前からお伝えしたいと思っていたウクレレの製作プロセスについて説明したいと思います。ただ先に予告しておきますが...相当オタクな内容かもしれませんし、誰がこんなことに興味持つんだ、という気もしますがご興味ある方はお付き合いを。

ウクレレ製作過程には大きく分けて以下の５つがあります。
①材料の用意、前準備
②トップ、バック、サイド、ネックの各パーツ製作
③各パーツの成形、接着
④サンディングと塗装の繰り返し
⑤ナット、サドル作成、弦を張り弦高などを調整

細かい作業で前後することもありますが、大体はこの順番で行います。

今回はこのうち①と②についてフォーカスしてお伝えします。

材料の用意、前準備、と一言で言っても作業は膨大にあります。

①の1：トップ、バック、サイド材の木取り

ウクレレに最適な材の部分を選び、マーキングしていきます。

①の2：バックのブックマッチ部の接着

本の左右見開きのような感じでバック材を対称に切り出して接着します。

① の3：各部材の厚み調整

これは専用のツール（ドラムサンダーというもの）で行います。 約2mm程度まで薄くします。

前準備が終わったら次は実際の製作に入ります。

② の1：ロゼッタ加工 

ロゼッタ（サウンドホール周りの装飾）部分の加工を行います。 
最初にロゼッタの溝を切り、そこにセルや貝などの装飾用の部材を埋めます。

接着後、サンディングします。 

②の2：サウンドホール作成 

ロゼッタ加工後、サウンドホールを開け（カットし）ます。 
（上記の写真のようにロゼッタ加工前にカットする場合もあります）

②の3：ブレーシング作成

「ブレーシング」とはウクレレを覗くと内側に張り巡らされた細い木で「力木」とも呼ばれます。その目的は強度をアップするだけでなく、音色や鳴りの強さのアップ、です。チープな大量生産品の場合、これがまったくないものもあります...。

ブレーシングの配置方法、デザインには一定のベストプラクティス（一番効果的として先人が確立した方法）があります。そういったものをベースに「音の良さ」という目標に向けて作り上げていきます。なお、ギター製作から入ったasteriskでは正統派のギター製法に従って、バックを若干湾曲させる「ドーミング」という工程も追加で行っています。バイオリンなどもこの方法をとっていることからわかるように音の反響をよくするための＋αの工程です。ブレーシング自体も該当箇所についてはドーミングの湾曲に合わせて若干のカーブを付けて作成します。

②の4：トップ、バックの形成 

トップ、バックの形成のうち最大の工程が実は②の3で作ったブレーシングの装着です。

なお、上記の写真ではすでにウクレレの形になっていますが、実はほとんどの場合は1枚の板の状態（ウクレレの形になっていない状態）でここまでの作業を行います。作業スペース上、先にカットしたほうが作業しやすい場合は最初のほうの工程で「おおまかに粗くカット」しておきます。最終的にはサイドからはみ出した部分を鉋（かんな）や鑿（のみ）で整えます。

 ②の5：サイドのベンディング（曲げ） 

自作のベンディング治具を使って水分と熱を加えながら丁寧にゆっくりと曲げていきます。急ぐと板が折れてしまうのです。

 ②の6：ネックブロックとテールブロックの作成 

ネックブロックはネックとボディをしっかりと固定するための重要なパーツです。テールブロックは左右のサイドを固定するためだけではなく、ピックアップやストラップボタンの設置にも重要です。この工程でそれを作成し次のステップでの接合に備えます。

ちなみにチープな大量生産品ではエンドブロックがなく、ストラップボタンの設置に苦慮することもあります。

下の写真で左端のウクレレ下部にあたる部分がテールブロックでネックと接合される部分がネックブロックです。

以下はネックブロックとネックのすり合わせを確認しているところ。

ネックブロックは最終的にこんな感じに使用する「要（かなめ）」のパーツです。

今回は主な５つの工程のうち最初の2つについて説明しました。

次回は「③各パーツの接着、成形」という製作の肝になる工程について説明します。

まだまだ先は長ーい！じっくりとお付き合いください。

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