Tips by Paul

これまでのTips by Paulのコーナーでは「ウクレレのカスタムオーダー」の概要と流れ、さらには実際にasteriskにご用命いただく場合のステップなどを紹介しました。今回は予告していました「ウクレレに使う木の種類や特徴」をお伝えします。実は多くの方が木に対して思い入れがあるようで、昨日の工房見学でも木の種類が話題に上りました。

●ウクレレの木材
●「マホガニー」
●「メープル」
●「桜」をウクレレに？
●「ハワイアンコア」
●「スプルース」について
●価格差

●ウクレレの木材

今回説明するのはウクレレのボディ部分の木材です。
ネックや指板、ヘッドなどには別な材を使用します。
通常「ｘｘｘ（木材名）」のウクレレという場合、ｘｘｘはボディ部分の材を指します。たとえば「オール桜材」のウクレレ、という場合はボディ（トップとボトム、サイド）がすべて桜の木材を使用したもの、という意味です。

なお、一番のポイントとして、ウクレレでもギターでも「トップ（表面板）が音色、音質を決定する」と言われています。そのため、トップにどの材を使用するのかがとても重要になります。

で、asteriskでは以下の4種類の材を主として使用しています。

- マホガニー

- メープル

- 桜

- ハワイアンコア

もちろんこれ以外の材もご用意できます。

ほとんどが輸入材ですが、国内の楽器専門木材業者から仕入れることが多いです。そのため、楽器用に十分乾燥された状態で工房に届きます。念のため含水率（どのぐらい水を含んでいるか）を調べてさらに、ストックする際は間に板を挟んで乾燥が進むようにしています。含水率は8%程度が理想です。

以下ではそれぞれの特徴について簡単に説明していきますね。

●ウクレレ材の定番「マホガニー」

マホガニーはウクレレに使用される最も一般的な木材です。マホガニーにもいくつか種類がありますが、基本的特徴は「物理的には軽量。音質的には甘く、包み込むような音、明るい音」と言われています。また「全体的な音のバランスの良さ」もマホガニーがファンの多い所以にもなっています。「コロコロと良く鳴る」と表現される方もいます。

ちなみにnekoleleはオールマホガニーの単板（ソリッド）を使用しています。あ、このキーワード、「ソリッド」についてもまた別な記事で触れますね。

●クリアな音色の「メープル」

「メープル」というと...メープルシロップを想像する方も多いでしょう。パンケーキの上にとろっとかける、あのシロップのおいしさといったら...

でもここではウクレレ材としてのメープルです。メープルは楓（かえで）のことです。

メープルはトップ以外に使用します。メープルとの組み合わせでは、トップは「スプルース材」を使用することが圧倒的に多いです。

メープルの特徴は「物理的には硬くて粘り強い。レスポンスが良いため、音質的には明瞭で澄み切った音色であること」です。

メープルのサイド・バック、トップはスプルース材を使用した
当工房のS/N #39 - Tokyo Model

●ウクレレに「桜」？

今や海外でも人気の高い「桜」材ですが、日本人のエモーショナルな部分とリンクして、桜を好まれる方も多いです。桜の特徴は「物理的にはメープルよりさらに固いがその割に重くない。稀少性のある材。メープル以上にレスポンスが良く、見た目の美しさからは想像できない質実剛健なところもある」

素晴らしい杢（もく）が出た桜の材はさらに硬質で、美術工芸品としても珍重されるほどです。あ、「杢」についてもまた別な記事で...。ここでは「木材の木目などで、まれに表れる複雑な模様のもので、稀少性が非常に高い」とだけ説明しておきます。

このコーナーでも何度か紹介しているこの「桜」ウクレレはこういった杢が素晴らしいものの1台です。

●ハイエンドウクレレの代名詞「ハワイアンコア」

ハワイアンコアの特徴は「物理的にはなんといっても硬く、重厚感がある。音質的には歯切れの良さ、明るさ、温もりがある」と言われています。

ハワイアンコアも杢の出たもの、所謂トラ目と呼ばれるものは特に硬質で、芸術的な美しさがあります。アロハシャツ着て、ハワイアンコアのウクレレでハワイアンソングなんて弾いたらもう...ステイホームでもバーチャルハワイツアーを満喫できます！

ハワイアンコアにコア材を使ったペグを使えばさらにオシャレ感がアップ

●「スプルース」について

冒頭で「トップ（表面板）が音色、音質を決定する」、そして先ほどは「メープル材のトップにはスプルースを使用することが多い」とお伝えしました。

何事も定石というものがあり、特にトップへのスプルース材の使用はウクレレ作りの世界では、先人の知恵とも言えるゴールデンコンビです。ギターにもよく使用されるスプルース材は「硬くて弾性が良い」という特長があります。「振動しやすく、音の響きが良く、音質的には鮮明で音量もある」点も多用されている一因です。

スプルースは色が白っぽい、クリーム色っぽいものが多いため、ウクレレの一般的なイメージとは合致しないかもしれませんが、ボリュームのある深い味わいの音を奏でるにはお勧めの材です。

●価格差など

最後に重要なポイント、価格差についてですが、どの程度稀少性があるのかによって決まります。一般には金額順に並べるとマホガニー、メープル、桜、ハワイアンコアという順番になります。また杢（もく）の状態によって大きく違ってきますし、そもそも杢自体、奇跡的に出来た、いわば自然からのプレゼントのようなものなので、２つとして同じものはないのです。技術と材がタイミングよくマッチングして出来上がるのがお客様だけの一台です。

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